・素材
「カシミヤ100%」という表示であっても、その品質は決して一様ではありません。
真の違いは、原毛の選定から最終仕上げに至るまで、目には見えない一つひとつの工程に注がれる確たる技術と貫かれた哲学にあります。
<SHE Tokyoのプレミアムカシミヤ>
SHE Tokyoのプレミアムカシミヤは、100年以上の歴史を持ち、世界三大ミルの一角と称される、イタリア屈指の名門毛織物メーカーが手がける最高峰のカシミヤを使用しています。世界各地から最高の原料を探し求め、世界中のラグジュアリーブランドや一流テーラーに選ばれる生地をつくり続けてきた老舗メーカーです。
プレミアムカシミヤの品質は、「上質な原毛を使用している」というだけでは語り切れません。一枚の生地が完成するまでには、原毛の選定、洗浄、デヘアリング(除粗毛)、紡績、染色、織り、整理加工、検査、と手間と時間をかけた数多くの工程があります。
この名門毛織物メーカーでは、そのすべてを一貫した哲学と卓越した技術、厳格な管理のもとで生地づくりが行われています。だからこそ、他では代えることのできない存在感を持つテキスタイルが生まれています。
<北イタリア・ビエラ地区>
工場があるのは、北イタリア・ピエモンテ州のビエラ。古くから毛織物産業が発展し、毛織物づくりに必要な技術が集積しています。世界最高峰の毛織物メーカーがこの地に集まってきた理由は、職人の技術だけではありません。
ビエラには、アルプスから流れ込む石灰分やミネラル分をほとんど含まない澄んだ軟水があります。
一般的なカシミヤの繊維は約15〜19ミクロンと、人の髪の毛のわずか3分の1から5分の1ほどしかない極めて繊細な繊維です。そのため、硬水に含まれるカルシウムなどの成分が付着すると、本来の柔らかさやしなやかさを損なってしまうことがあります。一方、ビエラの澄んだ軟水は、繊維に余計なものを残しにくく、カシミヤ本来の柔らかさや艶を損ないません。また、軟水は洗剤の働きを妨げにくいため、強い薬剤や過度な処理に頼らず、繊細なカシミヤに余計な負荷をかけることなく洗い上げることができます。
ビエラの水が育てるものは、柔らかな風合いだけではありません。この名門ミルが生み出す生地は、ひときわ美しい発色を湛えています。深みがあるのに濁らず、鮮やかな色であっても、決して派手には見えない。ミネラル分の少ない軟水は染料の働きを妨げにくいため、繊維の一本一本まで均一に色が入りやすく、染めムラが起こりにくい。そして、狙った色を正確に再現しやすいという特徴があります。複数の染料を緻密に組み合わせる調合士の感性と技術。そこに、染色を邪魔しないビエラの水が加わることで、透明感と奥行きのある、品格を備えた色が生まれています。
<最高級カシミヤ生地へ>
こうした恵まれた環境の中、世界各地から集められた選び抜かれた原毛は品質を守るため湿度まで徹底管理された工場で加工されます。刈り取られたばかりの原毛には土や油脂、植物片などが混ざっているため、まずは、それらを空気を含ませるようにふわりとほぐしながら、丁寧に洗っていきます。
洗浄したカシミヤ山羊の毛には、超極細で柔らかな産毛だけでなく、身体を外気から守るための太く硬い刺し毛や、細かな不純物が混ざっているため、デヘアリング(除粗毛)と呼ばれる工程で産毛だけを傷つけずに選り分けます。この工程では、繊維を傷つけず、できる限り長いまま残すことが重要です。短く切れてしまった繊維は、表面から抜け出しやすく、毛羽立ちや毛玉の原因となるためです。長い繊維を美しく残すことで、ふっくらとした膨らみ、なめらかな肌触り、毛羽立ちにくさ、そして流れるような美しいドレープが生まれます。
柔らかさだけではなく、永く美しく着ていただくための品質も、この段階からつくられています。
その後、長い繊維を生かしながら糸が紡がれます。糸の中に空気をたっぷり含め、表面は均一でなめらかな美しい糸へと仕上げていきます。
織る前のこれらの工程が優れているからこそ、織り上がった生地の美しさが成立します。
最高級のカシミヤコート地は、ただ柔らかければよいわけではありません。
織りの密度が低すぎれば型崩れしやすく、反対に密度が高すぎればカシミヤ本来の膨らみや柔らかさが失われてしまいます。わずかな境界を見極めながらカシミヤを織り上げるには、長い歴史の中で培われた職人の熟練の技術と確かな感性が欠かせません。
織り上がった生地は、ここからさらに磨き上げられていきます。
洗浄、起毛、剪毛、蒸絨、プレスなど、いくつもの整理加工を重ねながら、風合いと毛並みを育てていきます。起毛によって繊維を引き出し、長さの揃わない毛を剪毛し、蒸気と水分を与えながら毛並みを落ち着かせる。この工程を幾度も繰り返すことで、とろけるような肌触り、奥行きのある艶、流れるように整った毛並みが生まれます。一流のミルほど、この最後の整理加工に多くの時間と手間を費やしています。
<ジベリン加工>
SHE Tokyoのプレミアムカシミヤの仕上げとして依頼しているのが、名門ミルに受け継がれる伝統的な技術によって施される「ジベリン加工」です。
ジベリン加工とは、表面を起毛し、毛並みを丁寧に整えて、深い艶と陰影を生み出す仕上げ加工です。その美しい風合いを生み出すためには、極細のカシミヤ繊維を傷つけないよう、効率を優先した工業用の金属針ではなく、古くから受け継がれてきた技法に倣い、天然のアザミという植物の実が用いられます。
アザミを取り付けた起毛機で、生地の表面を何度も優しく撫でるように起毛し、カシミヤの繊維を少しずつ引き出すことによって繊維の長さを保ったまま、表面の毛並みだけを優しく整えることができます。
この手間と時間をかけた仕上げによって、空気を含んだ豊かな膨らみと、吸い込まれるような深い艶、そして、いつまでも触れていたくなる滑らかさが生まれます。100年以上受け継がれてきた整理加工技術と、伝統的なジベリン仕上げが重なり合うことで、カシミヤ本来の美しさが余すことなく引き出されています。
完成した生地は、数十項目に及ぶ細かな確認と最終検査を経て、初めて世界へと送り出されます。このクラスのカシミヤが用いられるのは、世界の名だたるメゾンブランドにおいても、ごく限られた最高級のコレクションのみです。
目には見えないすべての工程に、長い年月をかけて積み重ねられた知識と技術があります。
その背景を知ったうえで、改めてこの生地に触れていただくと、柔らかさや軽さだけではなく、本質を極めた美しさを感じていただけるはずです。
歴史、土地、原料、技術、そして人。そのすべてが、一枚の生地の中に息づいている。
それが、SHE Tokyoのプレミアムカシミヤです。